エンジニアリングウッドは日本ではまだほとんど生産されていないのが実状である。逆にアメリカでは一般的で、ツーバイフォーの材料として造られているのだが、これが他の国に普及していないのが不思議なくらいである。
PSL(パラレルストランドランバー)を例にとってみよう。アラスカやカナダのPSLは主に米松で造られるが、このPSLの原木から最終製品への有効利用率は驚くことに85〜95%に及んでいる。普通の米松の集成材が40〜45%、秋田杉の集成材に至っては20〜25%という歩留まりの悪さである。特に杉材はヤング係数が低いため、ラミナという25mm30mm厚 の板を挽くときにハンマーで叩きながら、ヤング係数のクラス分けを行い、梁材の辺材にヤング係数の高いラミナを配し、中心に低い材を配するというコンピューター製材を行っているが、それでもこの低い歩留まりである。喩えていえばマグロの大トロだけを食べてあとは捨てているようなものである。
こう考えるとエンジニアリングウッドの重要性は大きいことが分かる。無駄を無くし、ある時は枝まで利用してストランドをつくり、それを固めて梁をつくる。
この製法はむしろ間伐材の利用に適しているのではないかと思うほどである。ひょっとすると日本の林業の課題を救う道かも知れないと密かに思って、実践する集成材メーカーが表れることを心待ちにしているのである。
このエンジニアリングウッドの木造は、第4世代と位置づけられ、2000年以降は木と木がめり込みで力を伝えあう、金物のジョイントを使用しない、本来の木造構法に戻りながら、新しい空間をつくろうとする、第五世代の方向に木造建築設計は進んできた。
中村事務所では、稲山正弘氏と協働して長崎県森山保健センターを105o角材で12mスパンの空間をつくり、山辺豊彦氏と協働して厚木の七沢希望の丘初等学校を設計した。2015年には佐久間順三氏と協働して東松山市に化石体験館を設計した。
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