|
18 木造の第五世代−諫早市森山保健センター− |
旧森山町は「伝統から学ぶ美しい町づくり」をテーマとし、森山カントリーパーク公園に役場庁舎を中心とした複合施設を計画した。コンペで採択された私の案は、北の多良岳を借景とする広々とした芝生公園と樹林を北に配置し、南に複合施設を伝統の知恵を生かした木造建築とする計画である。第一期の保健センターが05年に完成し、今後二期以降が予定されている。
基本構成は4mスパンの不特定目的空間が8m、12mスパンの目的空間の間に平行配置され、中庭を介し、自由でフレキシブルな対応が可能なシステムで、浪合フォーラム以来、複合機能をまとめるときに使ってきた空間構造である。
私は20年前から木造の公共建築を試みてきた。大断面木造の第2世代、集成材による準耐火建築の第3世代、エンジニアリングウッドで間伐材利用が林業再生の方法と採用した第4世代に対し、この森山保健センターでは稲山氏の協力を得て、3寸5分、4mの住宅用角材によって8m、12mスパンの空間をつくり、伝統的なめり込みによって力を伝えていく、いわば第5世代といえる木造となった。林産県ではない長崎県の小さな材料で大きな空間をつくる工夫であり、諫早地方の民家の「ももつき葺き」(シコロ葺きの一種)という小さな部材で大きな屋根をつくる伝統工法を現代に生かした工法として町も賛同してくれた。
材積は120m3(0.15m3/m2)と少ないことと大型乾燥施設がなかったことなどから8万円/m3と高めのコストとなった。メンテナンスに関しては、常に竣工時に施設維持管理説明書を作成し維持管理計画と基本的内容をの踏襲を目指している。
空間への効果としては3寸5分という小さな部材であるため、その構造材としての存在感は小さく、特に4本の柱は105mm厚の壁のように存在感がなくなってしまうのが不思議なくらいだ。また新しい木造の可能性が開けたと思っている。 |
|
彰国社内外装チェックリスト06 |
|