尾根線は連続的な傾斜線を示していることが普通だが、断層のある部分は尾根線が流れ、少し水平線をつくり、それから元の傾斜に戻るといった形態のパターンが多く見られる。この水平線の上部点を隣り合う尾根に3つ以上見つけ、これらが直線で繋げられれば確実にその位置に断層が走っていると判断できる。大きな
断層の場合には、この水平な部分が大きな広がりをもち、高原台地を形成する。長野県の多くのスキー高原はこの断層台地である。丘陵地での建築はこの断層を避けることが重要なポイントである。
丘陵地を開発するときに注意するべきもう一つのポイントとして、水系の保存がある。尾根の肩部から下の谷部を一つの水系と見立て、大きな谷は一つの水系で単位とし、小さな谷は2、3を複合して水系単位とし、上下の水系を保存しながら開発する手法であり、環境に与える影響を最小限に抑えることができる。
こう考えると、大きな尾根の上部を開発することや、地形が変化している地点に建築を建てることは避けるべきであることがわかる。また、谷の水みち部や下層部は堆積土が多く、杭や地盤改良が必要であったり、杭への横力などが考えられるため、ここも避けなければいけない。建築物は開発単位内の小さな尾根部や緩斜面を利用することが望ましい。
愛知県で旭中学校を設計したときのことである。丘陵地の敷地を歩いてみると、中央の尾根の上部が痩せ尾根で赤松林となっている。周囲の尾根の状況は近すぎて判断できなかったがこれは断層だと感じた。断層の部分は崩れた岩が内部にあるため、地下水が浸透して表面水が少なく、植生としては松などの乾燥土壌を好む樹種が多い。敷地はこの尾根を中央において左右の小さな谷が西に流れている。この部分は堆積層で地下水系も流れている可能性が高く、土石流などの災害の危険性も考えられる。このような判断から上部をグラウンドとして中央の小尾根の下部に校舎を配置する計画とした。案の定、造成施工にあたって上部から処分しきれないほど大量の大石が出た。これを半分に割って割り肌を見せる石積み擁壁とし、デザイン的に建物の下部を固めることができたのは幸いであった。
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