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08 木構造による軽い屋根表現 |
木構造は極めて軽い構造である。最近は上部に軽い構造を採用することが当然の作法のようになってきていて、これを木構造で作れないかと試みを重ねている。もちろん、鉄骨造の軽快さと比べると、部材の太さが太いため、写真では重く見えるのだが、実際の見かけは木の軽さが意識され、ある大きさがないと逆に心許なくなる。学生や若い人はこの材料の強さと太さの感覚、同じ重さを支えるのに必要な太さが理解されないことが多い。また、雑誌だけで判断すると木造が重く見えるといった不利な点があるのは否めない。ただし、鉄骨の場合は外部とのヒートブリッジが出来ることが気になって、熱伝導率の小さな木造の可能性をさらに追求したいと思っている。
最近はこのように軽いデザインが全盛だが、これとは正反対のデザインとして1960年代のブルータリズムを思い起こす。槇事務所の立正大学は高く細い柱(群)が四角いコンクリートの箱を支えていて、その下部の空間的豊かさと、上部との対比が心地よかった。我々は普通より細いプロポーションの良い柱に憧憬を深めていたのだが、70年代に入って槇さんはもう私はトップヘビーはやりませんと言った。材料の重さをデザイン的に考えていなかった当時の自分には、これを不思議に感じたことを昨日のことのように思い出す。このときは槇さんがブルータリズムのコンクリートの重さを不自然と感じ始めた時期なのかもしれない。
上部構造が軽いことはいろいろ利点が多い。まず当然ながら、地震の水平力に対する固有周期が短いことであろう。従って壊れにくく、万一破壊された場合にも被害は少ない。また、ヒートアイランド現象についても、太陽のエネルギーを最も受ける屋根面が熱容量の大きいRC造であれば、昼間の太陽熱を夜間に放熱することになる。これを避けるために屋上緑化や有孔ブロックなどを屋根面にのせようとするが、よけい重くはなるし、熱容量も多くなるのだ。これが軽い木造で外断熱工法をきちんとしておけば、外皮のステンレス板は熱容量は小さく、また庇を長くしても木構造自体は断熱性能が高いため構造からヒートブリッジをつくることもなくてすむ。こうして出来る長い庇は、夏の強すぎる太陽熱を室内に入れず、冬の長い陽差しを取り込む光のコントロールや、雨や風による外壁やサッシを守る大きな耐久性を高める役目を果たしてくれる。
また、木構造で屋根をつくると、勾配のデザインがついてくるが、これが室内をゆったりと包み込むような空間に仕立て上げてくれることも、間接的だが大きな利点と考えている。 |
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旭中学校食堂:木構造架構 |
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「エコマテリアル百話」掲載0110 / 写真:堀内広治 |
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